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外国人労働者助成金ー制度設計と申請実務のポイント

SAS助成金通信 2026年(令和8年)4月号
人材確保等支援助成金
外国人労働者就労環境整備助成コース
「定着」を成果に変える制度設計と申請実務のポイント

人手不足が慢性化するなかで、技能実習・特定技能・留学生アルバイトなど、外国人材を受け入れる企業は増えています。一方で、言語の壁や制度理解の差から、労働条件や解雇・退職をめぐる誤解が生じやすく、ちょっとした行き違いが早期離職や労使トラブルに直結しがちです。

令和7年4月の見直しで支給額の算定がシンプルになり、実務としては「何をいつ整備し、どこまで実績を残すか」がより重要になりました。

制度概要(要件の全体像)
対象事業主 雇用保険被保険者となる外国人労働者(特別永住者、在留資格「外交」「公用」を除く)を雇用する事業主。技能実習生も含み、アルバイト等であっても雇用保険の被保険者になる場合は対象になり得ます。
就労環境整備措置 必須:雇用労務責任者の選任、就業規則等の多言語化
選択(1つ):①苦情・相談体制の整備、②一時帰国のための休暇制度の整備、③社内マニュアル・標識類等の多言語化
計画期間 3か月以上1年以内(開始日は「最初に措置を導入する月の初日」)
支給額 1制度導入につき20万円(上限80万円)
成果(定着)要件 離職率算定期間(実施日翌日から6か月)における外国人労働者離職率が15%以下(2〜10人の場合は離職者数1人以下)。計画提出日から算定期間末日まで継続雇用される外国人労働者が1人以上いること
申請期限 離職率算定期間末日の翌日から2か月以内に支給申請
1 対象事業主・対象となる外国人労働者

外国人雇用状況届出の対象となる雇入れ・離職の届出が前提になるため、在留資格の把握と届出管理を、助成金の手続とセットで点検しておくことが重要です。

2 就労環境整備措置の全体像:必須2+選択1
必須措置① 雇用労務責任者の選任

「誰が窓口となり、何を定期的に確認するか」を明確化する措置です。面談の実施と記録、関係行政機関への相談案内の周知までがセットで求められます。単なる「担当者の指名」で終わらせず、面談フォーマットや周知文書を整備しておく必要があります。

専任でなくても差し支えないが、雇用保険適用事業所ごとに選任が必要
適任者がいない場合は事業主や役員の中から選任も可
複数の雇用保険適用事業所の雇用労務責任者を兼ねることはできない
必須措置② 就業規則等の多言語化

就業規則そのものに限られず、労働条件通知書や雇用契約書の多言語化でも要件を満たし得ます。雇用する労働者の母国語での記載のほか、「やさしい日本語化」も含まれます。

選択措置(いずれか1つ)
苦情・相談体制の整備(就業規則・労働協約の改定を伴う)
特定技能外国人を雇用する事業主や技能実習の監理団体については対象外となる場合があります
一時帰国のための休暇制度の整備
年休とは別枠の有給休暇として連続5日以上を制度化し、実際の取得が必要
社内マニュアル・標識類等の多言語化
安全衛生・ハラスメント・福利厚生など恒常的に提示される文書や動画・標識等
複数事業所を持つ企業の注意点:支給単位は「事業所単位」ではなく「事業主(企業)単位」のため、原則としてすべての事業所で就労環境整備措置を導入する必要があります。
3 支給額・支給対象経費(令和7年4月改正のポイント)

外部機関等に委託した場合の支給対象経費として算定できるのは、次のものが典型例です。

通訳費
翻訳機器導入費・翻訳料
弁護士・社労士等への委託料(顧問料等は除く
多言語の社内標識類の設置・改修費
「顧問料等は含まない」点は実務で最も問い合わせが多い論点です。助成対象は"当該措置のために要した委託料"であり、恒常的な顧問契約や定例会議のような包括的サービスは切り分けが必要です。ただし定額助成のため経費の相見積りは不要。自社内で整備し費用がかからない場合はその旨を申し立てることで問題ありません。
4 申請の流れと期限管理
計画作成・提出開始1か月前まで
認定労働局審査
措置の導入・実施計画期間内
離職率算定実施日翌日〜6か月
支給申請算定期間後2か月以内
計画提出前の発注・支払いは支給対象外となり得ます。着手タイミングの管理が最重要です。
導入日と実施日の考え方
措置 導入日 実施日
雇用労務責任者の選任 氏名を掲示等により周知した日 1回目の面談を実際に行った日
就業規則等の多言語化 多言語化した文書が完成した日(外部委託なら納品日) 外国人労働者に周知した日
苦情・相談体制 規程の施行日 周知(苦情・相談受付)日
一時帰国休暇制度 規程の施行日 連続5日以上の有給休暇取得の最後の日
5 支給要件:離職率と「継続雇用1人以上」

支給要件の核心は「職場定着の成果」を一定期間で示す点にあります。

離職率算定期間における外国人労働者離職率が15%以下(算定期間初日に外国人労働者数が2人以上10人以下の場合は離職者数1人以下)
計画提出日から離職率算定期間末日まで継続して雇用されている外国人労働者が1人以上いること

採用計画や在留期間の満了が見えているケースでは、計画期間や対象者設定を誤ると要件未達になりやすいので注意しましょう。

6 実務の落とし穴:記録・周知・費用の切り分け
雇用労務責任者の面談記録:計画期間中に外国人労働者と1回以上行い、結果を「書面で」残す必要があります(テレビ電話による実施も可)。日付・相手・確認事項・対応内容が後日追えるよう一覧表化しておきます。
多言語化の範囲と周知:外国人労働者が理解できる言語であれば足り、必ずしも母語を網羅する必要はありません。
苦情・相談体制・休暇制度の「新規整備」の証明:就業規則または労働協約を「変更して新たに定める」ことが前提のため、施行日・周知方法・運用実績(相談受付や休暇取得)をセットで説明できる状態にします。
対象外になりやすい費用の切り分け:顧問契約のような包括サービスを委託料として計上すると対象外となる場合があります。スポット業務として委託する場合は、契約書・見積書・納品物(翻訳物・標識写真等)・支払証憑を一連で保全し、措置との対応関係を明確にします。
申請書類の3系統で管理する
A成果物フォルダ:翻訳物・規程・マニュアル
B運用記録フォルダ:面談記録・相談対応記録・休暇取得実績
C費用証憑フォルダ:見積・契約・請求・領収
制度を「申請」で終わらせず、「定着」という成果に変える

本コースは、単に「翻訳費が出る助成金」ではなく、外国人雇用を整えるための制度です。雇用労務責任者の選任・面談記録、就業規則等の多言語化、相談体制や休暇制度、社内マニュアルの整備は、いずれも助成金の有無にかかわらず定着とトラブル予防に直結します。

自社における課題(離職の理由が言語・制度理解・ハラスメント・生活支援のどこにあるか)を見立てたうえで、選択メニューと成果物を設計し、期限管理と実績管理まで一気通貫で実施することが重要です。

厚生労働省 公式情報・リーフレット(令和8年4月現在)
最新の要件・支給額・申請書類等は、厚生労働省の公式ページでご確認ください。
厚生労働省 人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース) のページを見る ↗
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