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パブリックコメント案から読む 令和8年度「雇用関係助成金」改正のポイント

SAS助成金通信 2026年(令和8年)3月号
パブリックコメント案から読む
令和8年度「雇用関係助成金」改正のポイント
厳格化・拡充・廃止の全体像と実務への影響
本記事は令和8年3月時点のパブリックコメント案に基づく情報です。最終的な制度内容は支給要領・Q&A等でご確認ください。

厚生労働省が雇用保険法施行規則等の一部改正案を示し、e-Gov上でパブリックコメントを実施しました。パブリックコメント資料は、予算案だけでは読み取りにくい「要件」「支給単位」「加算の狙い」を具体化した、来年度助成金の"設計図"ともいえる資料です。

制度導入だけでは支給しない「厳格化」、政策重点分野へ資源を寄せる「拡充」、実績低調なメニューの「廃止・整理」が、より明確に読み取れます。

※以下はパブリックコメント段階の案に基づく整理です。最終決定や支給要領・Q&Aにより運用が調整される可能性があります。
1 「制度導入」から「成果」へ――改正案の3つの潮流
第一 アウトカム重視:「利用実績」「賃上げ」といった結果を求める流れが強まっています。制度整備で終わらず、実際に休暇が使われた・賃金を引き上げたといった実績が求められます。
第二 助成額の適正化:人材開発支援助成金のeラーニング等で高額な費用申請が増えたことを踏まえ、上限額の見直しなど不正受給防止と費用水準の整合を図ります。
第三 政策重点への集中:労働移動・リスキリング・仕事と介護の両立・高年齢者の活躍に沿って、活用が進んでいる助成金を重点化し、十分に活用されていないものは整理・見直しが進められます。
2 厳格化される助成金
(1)両立支援等助成金:子の看護等休暇の有給化

現行では制度を有給化して導入すれば取得実績がなくても支給対象(制度導入のみで30万円)でしたが、改正案では「制度導入後、実際に制度を利用した被保険者が生じたこと」等を求める方向となり、制度導入だけでは支給が完結しません。

加算も見直され、障害のある子等を養育する対象被保険者が利用できる期間を子が18歳になる年度末等まで延長した場合に20万円加算というターゲット型の加算へ整理されます。

実務対応:就業規則の条文化に加えて、申出書式・勤怠管理・賃金台帳(有給であることの取扱い)まで含めた運用設計が必須。子の看護等休暇申出書・承認・取得の実績が整っていないと、制度はあっても申請でつまずく可能性があります。
(2)人材開発支援助成金:eラーニング・通信制訓練の上限見直し

eラーニング及び通信制訓練の助成額上限が見直されます。事業展開等リスキリング支援コース(eラーニング・通信制)の上限額は、中小企業15万円・大企業10万円に見直される見込みです(コース別に上限額は異なります)。

実務対応:見積書・請求書の内訳(LMS利用料・教材費・受講管理費など)の積上げ方法、訓練時間・単価の妥当性の説明、修了証・試験結果など成果の証憑の整備が重要になります。
(3)特定求職者雇用開発助成金:特定就職困難者コース(高年齢者要件の見直し)

これまで60歳以上であれば幅広く対象になり得ましたが、改正案では「公共職業安定所等で担当者制の職業相談等の個別支援を受けた者」に限定する方向が示されています。

実務対応:採用前(求人申込み・紹介・面接)の段階から「個別支援の対象者か」を確認することが必要です。採用後に要件を満たすのは難しいため、ハローワーク等からの連絡や紹介状で確認します。
3 拡充される助成金
(1)キャリアアップ助成金:正社員化コース「情報公表加算」の新設

有期契約労働者等の情報公表加算が新設されます。正社員転換制度等の概要や直近3事業年度の転換者数等を自社ウェブサイトまたは厚生労働省サイトで公表した事業主に対し、1事業所当たり1回限り20万円(中小企業以外は15万円)が加算される見込みです。

情報公表は採用広報や定着にも資するため、助成金の枠を超えたメリットがあります。公表項目の定義とURL・更新履歴の保存がポイントです。
(2)両立支援等助成金:企業規模要件の拡大と介護分野のメニュー拡充

従来「原則中小企業限定」であった企業規模要件が見直され、常時使用する労働者300人未満の企業へ対象が拡大する方向が示されています(出生時両立支援、育休中等業務代替支援コース等で明確化)。

また、介護離職防止支援コースでは「介護休暇の有給化支援」が新設予定です。制度導入に加えて利用実績が要件となり、原則30万円、年10日以上付与制度であれば50万円の支給(1回限り)などが示されています。

ここでも「利用実績」が鍵です。介護休暇申出・取得の記録、要介護度が分かる資料の準備、周知資料・相談窓口の整備まで含めた制度設計が必要です。
(3)65歳超雇用推進助成金:助成額の増額と複数回利用の解禁
変更点 改正前 改正後(案)
65歳超継続雇用促進コース 支給額 10万円〜160万円 15万円〜240万円
1事業主当たり利用回数 1回限り 段階的措置なら複数回可

段階的な措置(例:65歳定年→70歳まで継続雇用→定年廃止等)を講じる場合にも再度助成を受けられるようになります。制度改定のタイミングを企業戦略に合わせて切り分けやすくなります。

(4)人材開発支援助成金:事業展開等リスキリング支援に設備投資助成を創設

訓練修了後に事業展開等に資する機器・設備を導入し、訓練受講者全員の賃金引上げを行った場合に、購入費用の2分の1を助成(上限:受講者1人当たり15万円×人数、または150万円のいずれか低い額)する設計です。

訓練内容と設備投資の整合が問われやすく、計画段階で「なぜこの訓練とこの設備が必要か」を説明できるようにしておく必要があります。
(5)早期再就職支援等助成金:中途採用拡大コースの見直しで「実質利用可能」に

採用人数要件・中途採用率要件を緩和しつつ、賃上げ(5%以上)を必須要件にする一方で、助成額を「1事業所当たり定額」から「中途採用者1人当たり20万円」に変更し、1事業所当たり上限20人とする設計です。

キャリアアップ助成金(正社員化)が「転換」による支援であるのに対し、本コースは「最初から正社員採用」で支援できる点が特徴です。賃上げ要件の証明・中途採用率の算定・対象者定義の整理を誤ると不支給リスクが高くなります。採用計画段階からの数値管理が不可欠です。

4 廃止される助成金
早期再就職支援等助成金(UIJターンコース):支給要件の見直しを行ったものの利用実績が少ないことを理由に、令和7年度限りで廃止する方向が示されています。今後は自治体の移住支援や別枠の補助制度等へ軸足が移る可能性があります。
特定求職者雇用開発助成金(成長分野等人材確保・育成コース):デジタル・グリーン等の成長分野への労働移動と人材育成を促す目的で創設されたものの、実績低調のため令和7年度限りで廃止。今後は人材開発支援助成金(リスキリング支援)や賃上げ・生産性向上を条件とした施策へ統合される流れです。
5 年度当初に申請上の行き違いを防ぐために
要件の「実績化」への対応:「制度導入→支給」から「導入+利用実績→支給」へ変わる類型では、就業規則の条文化だけでなく、申出書・勤怠項目・賃金控除の扱い・周知資料までをワンパッケージで整備し、申請時に「利用実績が見える」状態を作ることが重要です。
賃上げ要件の管理:中途採用拡大コースでは賃上げ(5%以上)が必須。雇入れ前後の賃金比較や訓練修了後の賃金引上げのタイミングは賃金台帳の記録と不可分です。評価・賃金規程の整備も含め、賃上げを「制度で回す」準備が求められます。
対象範囲の拡大と併給調整の確認:両立支援等助成金の対象拡大は追い風ですが、複数コース・複数助成金の併給調整は必ず論点になります。新設・見直しのコースほど細かな併給制限が置かれやすいため、「併給可否チェックリスト」を作っておくと取りこぼし・事故が減ります。
正社員化の選択肢が二本立てに:従来のキャリアアップ助成金(転換)に加え、早期再就職支援等助成金(中途採用拡大)を活用して"最初から正社員採用"で支援するルートが太くなります。企業の採用戦略に応じて制度を選び分け、要件(賃上げ・採用率・情報公表)を逆算して設計することが、令和8年度の助成金実務の活用の軸になりそうです。
雇用関係助成金の活用をご検討の方へ
要件の確認・申請準備・就業規則整備まで、SAS社会保険労務士事務所がトータルでサポートします。
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※出典:雇用保険法施行規則等の一部を改正する省令案に対する御意見の募集について(e-Gov)
発行:SAS社会保険労務士事務所 TEL 03-6262-9887