経営情報 / 2026年7月
地震だけじゃない
令和7年度調査が示す、企業が見落としがちなリスクの全体像
令和7年度調査が示す、企業が見落としがちなリスクの全体像
「うちのBCPは地震対策が中心」という会社は多いはずです。しかし内閣府防災担当が2026年3月に発表した調査によると、企業が重視するリスクは地震にとどまらず、情報システム障害・感染症・物流断絶など多岐にわたっています。自社のリスク管理が地震一辺倒になっていないか、この機会に視野を広げてみましょう。
調査の概要——国内1,759社の回答から見えてくるもの
今回参照するのは、内閣府防災担当が実施した「令和7年度企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」です。企業規模別(大企業・中堅企業・その他企業)に分類した5,052社を対象に、2025年11月〜12月に行われ、1,759社から有効回答を得たもの(回収率34.8%)です。
まず全体の傾向として、回答企業の72.3%が「リスクを具体的に想定して経営を行っている」と回答しています。「現在検討中」の18.5%と合わせると、9割以上の企業が何らかの形でリスクへの備えを意識していることになります。
地震が圧倒的1位——ただし2位以下にも注目すべき項目が
企業が重視するリスク(複数回答)の全体トップは地震(91.4%)でした。規模を問わず1位となっており、日本の企業が地震リスクをいかに重視しているかがわかります。2位は感染症(新型インフルエンザ等)で59.3%、3位は情報システム停止(49.5%)となっています。
企業が重視するリスク・上位10項目(全体、複数回答)
| リスク項目 | 全体 | 大企業 | 中堅企業 |
|---|---|---|---|
| 地震 | 91.4% | 96.7% | 92.2% |
| 感染症(新型インフルエンザ等) | 59.3% | 71.1% | 62.0% |
| 情報システムの停止(サーバー・データセンター等) | 49.5% | 58.3% | 43.9% |
| 洪水(津波以外) | 47.9% | 63.4% | 48.1% |
| 火災・爆発 | 42.8% | 60.1% | 46.5% |
| 取引先企業の倒産・事業中断 | 27.5% | 37.8% | 27.8% |
| インフラ(道路等)の途絶 | 27.6% | 34.9% | 30.8% |
| 物流網の断絶による仕入品の欠品 | 28.8% | 45.1% | 27.2% |
出典:内閣府防災担当「令和7年度企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」をもとに作成
中小企業が見落としがちなリスク——規模間格差が大きい項目
大企業と中小・その他企業の間で対応比率の差が大きいのは、情報システム停止(大企業58.3% vs その他49.7%)、物流網の断絶(大企業45.1% vs その他24.5%)、取引先の倒産・事業中断(大企業37.8% vs その他24.1%)、テレワーク等によるコミュニケーション不足(大企業28.4% vs その他11.0%)などです。
大企業はこれらのリスクを既にBCP(事業継続計画)に組み込んでいますが、中小企業は対応が遅れる傾向があります。特に情報システム停止は、クラウドサービスや基幹システムへの依存度が高まった現代において、業種を問わず事業継続に直結するリスクです。
国際情勢の緊迫化——新たなリスクとして浮上
今回の調査では、テロ・紛争(国内外)(全体11.9%)や、他国からのミサイル攻撃(全体4.9%)といった地政学的リスクも選択肢に加わりました。数値は低いものの、大企業では22.6%がテロ・紛争リスクを重視しており、国際展開する企業での意識の高さが見て取れます。国際情勢の変化が事業環境の不確実性を高めている現状では、これらのリスクも視野に入れておく必要があります。
自社のリスク棚卸しに使える視点
BCP(内閣府:企業の事業継続計画)や防災計画を見直す際には、「地震が起きたとき」だけでなく「取引先が倒産したとき」「システムが止まったとき」「感染症が流行したとき」「物流が滞ったとき」という複数のシナリオを想定することが重要です。各シナリオについて、「業務がどこまで止まるか」「誰が何をするか」「どこに連絡するか」を事前に決めておくことが、実効性のある備えにつながります。
ポイントまとめ
国内1,759社の調査によると、72.3%がリスクを具体的に想定して経営。9割超が何らかのリスク対策を検討中。
最大リスクは地震(91.4%)。次いで感染症(59.3%)、情報システム停止(49.5%)の順。
中小企業は情報システム停止・物流断絶・テレワーク時のコミュニケーション不足への対応が遅れる傾向。
BCPは「地震だけ」から「複数シナリオ」へ。誰が何をするかを事前に決めておくことが実効性の鍵。
SASより
労務管理の観点からも、感染症・自然災害・情報システム障害などが発生したときに「誰が出勤できるか」「テレワークへ切り替える判断基準は何か」「休業手当はどう計算するか」といった点を事前に整理しておくことが重要です。就業規則や労使協定の整備を含め、ご相談があればお気軽にどうぞ。
SAS社会保険労務士事務所
特定社会保険労務士 佐藤 創
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