労務管理情報 / 2026年7月
採用書類の落とし穴
10月から始まるパート・契約社員向け労働条件通知書の新ルール
10月から始まるパート・契約社員向け労働条件通知書の新ルール
2026年10月1日から、パートタイマーや契約社員を雇い入れる際の労働条件通知書に新しい記載事項が加わります。「正社員との待遇差について説明を求めることができる」旨の明示が義務化されるのです。また、現行ルールでもすでに必須のはずが見落とされがちな4項目もあります。採用書類のひな形を今から見直しておくことをお勧めします。
なぜ今、この改正が行われたのか
パートタイム・有期雇用労働法(厚生労働省)(パート・有期法)の第14条第2項には、「会社はパートや契約社員から求めがあった場合、正社員との待遇の相違の内容・理由を説明しなければならない」という規定があります。しかし実態として、この権利を知らないまま働いているパート・契約社員が多く、制度が十分に機能していないという問題がありました。
そこで今回の改正では、「説明を求める権利があること」をより広く周知するため、雇い入れの際に交付する労働条件通知書の記載事項として明示を義務化することとなりました。労働者が自ら制度を知って活用できるよう、会社側が積極的に情報を提供する義務が生まれます。
10月1日から追加される記載事項とその記載例
厚生労働省が提供するモデル労働条件通知書では、新たに次のような記載例が示されています(趣旨を踏まえた内容です)。
【記載例】待遇の相違等に関する説明を求めることができる旨
あなたは、次の窓口に対して通常の労働者との間の待遇の相違(内容・理由)等について説明を求めることができます。
部署名:_______________
担当者氏名:_______________ (連絡先:_______________)
部署名:_______________
担当者氏名:_______________ (連絡先:_______________)
※「通常の労働者」は自社の呼称(「正社員」等)に置き換えて記載できます。
担当部署名と担当者氏名・連絡先まで具体的に記載する必要がある点に注意してください。「人事部」「総務課」のような部署名だけでなく、実際に相談に応じる担当者の情報まで明記することが求められます。
現行でも必須なのに見落とされがちな4項目
実は現行のパート・有期法でも、一般的な労働条件通知書に記載する事項に加え、パートや契約社員を雇い入れる際には以下の4項目を追加する義務がすでにあります。これらが漏れているケースが実務上よく見られます。
① 昇給の有無
「昇給なし」の場合でも、明示が必要です。記載がないと法令違反になります。
② 退職手当の有無
支給がない場合でも「なし」と明示することが求められます。
③ 賞与の有無
「なし」でも記載が必要です。賞与の有無は雇用条件として重要な情報です。
④ パートタイム・有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する相談窓口
今回10月から追加される「待遇の相違に関する説明窓口」とは別に、雇用管理全般の相談窓口も明示が必要です。記載漏れが最も多い項目です。
定年後再雇用の嘱託社員も対象——見落とし注意
正社員が定年退職後に「嘱託社員」として有期契約で再雇用されるケースは多くの企業で見られます。この嘱託社員も、週所定労働時間が正社員より短い場合や期間の定めがある場合は、パート・有期法の適用対象になります。
そのため、嘱託社員を雇い入れる際の労働条件通知書にも、①〜④の4項目と、10月から追加される「待遇の相違等に関する説明を求めることができる旨」の記載が必要です。「もともと正社員だったから」という理由で通知書の内容を簡略化してしまっているケースが見受けられますので、ひな形を確認してください。
対応のポイント——ひな形の更新と窓口設置
今回の改正に対応するために必要な作業は大きく2つです。第一に、労働条件通知書のひな形を更新すること。既存のひな形を使い続けている場合は、④の相談窓口欄と今回追加される待遇説明窓口欄が入っているかを確認し、不足があれば追記します。第二に、相談窓口として記載する担当者を社内で決めておくこと。形式的な窓口だけでなく、実際に相談に対応できる体制を整えておく必要があります。
ポイントまとめ
2026年10月1日から、パート・契約社員の雇い入れ時に「待遇の相違について説明を求めることができる旨」の明示が義務化。
記載には担当部署・担当者氏名・連絡先まで具体的に明示することが必要。
現行でも義務の4項目(昇給・退職手当・賞与の有無、相談窓口)が漏れているひな形は今すぐ修正が必要。
定年後再雇用の嘱託社員も対象。正社員と同じひな形では不足が生じる。
SASより
実務上、④の相談窓口の記載が漏れているひな形は非常に多く見られます。また、「昇給なし」「退職手当なし」と明示することへの心理的抵抗から記載を省略しているケースもあります。しかし記載がない方が後々のトラブルリスクは高くなります。ひな形の見直しをご希望の場合はお気軽にご相談ください。
SAS社会保険労務士事務所
特定社会保険労務士 佐藤 創
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