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#1:「人は感情に基づき行動し、論理で正当化する」の落とし穴

 一般に、人の行動について考えるとき、「感情論」が優先されます。いわゆる「人は感情に基づき行動し、論理で正当化する」というやつで、理論的には、ある心理学者が唱えた「認知的不協和」と言われるものがバックボーンになっているようです。

 

 要は、人は皆、自分の感情に従い行動し、後付けで都合よく解釈しているだけだと。これはある意味その通りとも言えますが、こうした考えをベースとして、相手の感情になるべく寄り添って、傾聴・共感・承認を繰り返し、相手の行動を促そうとするような体系が、一昔前からある「コーチング」だったりします。

 

 しかし、この「感情」ですが、よく考えると、実はもう一段上には「論理」があることがお分かりになりますでしょうか。

 例えば、「目の前にあるコップの水を飲む」という行動について。

 これを、「論理的な行動だ」という方はあまりいらっしゃらないと思いますが、実は極めて論理的な行動と言えます。

 

それを飲むことでのどの渇きを癒すことができることを過去の経験を通じて体得し、そしてそれがこの世の中で水という言葉で言われているという事実的世界(=論理)を知って、行われる行動。

 

当たり前ですが、生まれて数か月の赤ん坊の目の前に、コップの水を置いても、無反応か泣き叫ぶかひっくり返すかはするかもしれませんが、間違っても飲むという行動は取らないはずです。

 

 なぜ、このようなある意味、屁理屈のような話をしたかと申しますと、私たちは、この世界を言葉を通じてしか認識できないこと、普段、絶対的な事実と思いこんでいることは、実は言葉によって決められているということをお伝えしたかったからです。

 

 近代の哲学者カントの有名な言説で、「認識が対象に従うのではなく、対象が認識に従う」というものがありますが、これは、「まず身の回りにいろいろな対象物があって、(その後)それを私たちが認識しているという構図ではなく、人それぞれの認識に基づいて対象物(という事実的世界)が浮かび上がっている、要は私たちが主体となって認識することで初めて世界が成り立っている」と言っています。ただ、この時代では、まだ「認識」なるものの正体が明確になっておらず、その後、現代になって人間の内面にフォーカスする心理学などの分野が派生することにも繋がるわけですが、現代哲学においては、その正体が「言語(言葉)」であることを突き止め、言い換えれば、「言葉が事実に従うのではなく、事実が言葉に従う」ことに辿り着いたわけです。

 

 例えば、道路にある信号機の「青信号」。

 あれは、どう見ても「青」色ではなく、「緑」色なわけですが、誰も何の疑いも違和感もなく、「青信号」と呼んで、この社会は成り立っています。因みに、英語圏では、「Blue Light」ではなく、「Green Light」とされており、他の言語圏でも「緑」を表す言語で呼ばれているようですので、「青」としているのは日本だけだそうです。何かのクイズでやってましたが、昭和初期の時代に、ある新聞報道で、「青信号」と表記されてから、定着しているということでした。

 

 以上は、単なるトリビアとしてご紹介したかったわけではなく、重要なのでは、そもそもどのような世界、どのような業界であっても、こうした普段当たり前と思っていること、常識と考えられていることにおかしな点がある、そしてそれは言葉のレベルで私たちの深層心理に(時には感情という名の下、あたかも絶対的な事実のようなフリをして)入り込んでいるため、なかなか気づきにくいという特性があるということです。

 

 先行き不透明なこの時代、「常識を疑え」「前提を覆せ」とはよく言われることですが、その「常識」とか「前提」というのは、本来的には言語レベルで疑ってかかる必要があり、そうすることで初めて世界を薄めて見ることが可能となり、ビジネスの場面でいえば、新たな商流や新サービスなどイノベーションが実現できるともいえます(偉そうに言ってしまいましたが、当然それは簡単なことではなく、私自身、自戒を込めて、申し上げています。)。 

 

あなたの業界の「青信号」は何ですか?

そこに思わぬビジネスのヒントが隠されているかもしれません。

 

(2018-11-1)

 

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(2022-5-13更新)