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2014/7/17号 メルマガ記事③

台風等の天候が原因で従業員が

出勤できない場合の賃金の取扱い

 文書作成日:2014/7/17

 

 これからのシーズンにおいては台風等により公共交通機関が不通となり、従業員が出勤できないといったケースが生じる可能性があります。今回はそうした際の賃金の取扱いについて解説しましょう。

 

1. 使用者の責に帰すべき事由となるもの・ならないものの範囲
 そもそも労働基準法において、使用者の責に帰すべき事由により従業員を休業させた場合、その日について平均賃金の6割以上の手当(休業手当)を支払いが必要とされています。そのため、台風等により公共交通機関が不通となったことが使用者の責に帰すべき事由となるのか、それともならないのかによって対応が異なりますが、その判断基準については通達で以下の通り示されています。

① 使用者の責に帰すべき事由となるもの
 使用者の責に帰すべき事由となるものとしては、使用者の故意・過失による場合はもちろん、資金難や原材料不足などによる場合、新規学卒内定者の就労始期の繰下げなど、会社都合による自宅待機措置も含まれることになっています。関連する通達として、以下のものが出されています。
[関連通達]
・親会社からのみ資材資金の供給を受けて事業を営む下請工場において、親会社の経営難のため資材資金の獲得に支障を来し、下請工場が所要の供給を受けることができず、しかも他よりの獲得もできないため休業した場合は、使用者の責に帰すべき事由に該当する。(昭和23年6月11日 基収第1998号)
・新規学卒者の採用内定については、一般には例年の入社時期を就労の始期とし、一定の事由による解約権を留保した労働契約が成立したとみられる場合が多いから、企業の都合によって就労の始期を繰り下げる、いわゆる自宅待機の措置をとる場合には、その期間について休業手当を支払う必要がある。(昭和63年3月14日 基発第150号)
 
② 使用者の責に帰すべき事由とならないもの
 一方、使用者の責に帰すべき事由とならないものは、天災事変その他の自然現象による場合であり、不可抗力によるものが該当します。また、休電による休業、労働安全衛生法上の健康診断の結果による休業または労働時間の短縮などについても使用者の責に帰すべき事由とされないことになっており、関連する通達として、以下のものが出されています。
[関連通達]
・労働安全衛生法第66条の規定による健康診断の結果に基づいて使用者が労働時間を短縮させて労働させたときは、労働の提供がなかった限度において賃金を支払わなくても差し支えない。(昭和23年10月21日 基発第1529号、昭和63年3月14日 基発第150号)

 

2.休業した場合の賃金の取扱い
 上記のことから、台風により公共交通機関が不通となり、従業員が出勤できないケースにおいては通常、使用者の責に帰すべき事由とはならないことから、会社に休業手当を支払う義務は生じないことになります。      

 また実務上、台風が近づいてくるため終業時刻を繰り上げて従業員を帰宅させることがありますが、このような場合には通常の休業手当の取扱いとは異なります。具体的には実際に勤務した時間に対して支払われる賃金が平均賃金の6割に相当する金額を満たしている場合、その差額を支払う必要はないということになっています。

 具体例を挙げてみると、1日の平均賃金が10,000円の場合、休業手当は6,000円(10,000円×60%)となります。帰宅させるまでに働いた分の賃金が7,000円であったときは、7,000円>6,000円となることから改めて休業手当を支払わなくてもよいということになります。反対に働いた分の賃金が5,000円であったときは、5,000円<6,000円となり、6,000円-5,000円=1,000円を休業手当として支払う必要があります。

 今回のケースのように台風等により従業員が出勤できない場合、従業員から会社の方に賃金の取扱いがどのようになるのか問い合わせが入る可能性があります。そのため、使用者の責に帰すべき事由となるもの・ならないものの範囲と、その際の賃金の取扱いについて確認しておきましょう。

 

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。