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#6:厚生労働省の統計問題

 厚生労働省の毎月勤労統計で不適切な調査があったことが、大きな問題となっています。

 

 「毎月勤労統計調査」とは、賃金、労働時間及び雇用の変動を明らかにすることを目的に厚生労働省が定期実施している調査です。個人的にも関与先企業に賃金の参考データとして提示したり、育児休業給付や雇用継続給付の基準賃金に使われたりなど、仕事柄非常に馴染み深いものでもあります。

 

 問題となっているのは、従業員500人以上の事業所について、本来であれば全数調査すべきところ、一部調査しかしていなかったとのこと、それにより賃金の平均額などが低く計上され、結果として、失業給付などが本来の金額よりも低く支給されてしまったことが判明しました。

 

 もっとも、統計学の手法上、一部調査・抽出という手法が必ずしもダメなのかというとそういうわけではなく、今回の場合で言えば、総務省に事前申請の上、許可を受けていれば、何の問題もなかったわけですが、そうした然るべき手続きを踏まずに厚労省の独断で行い、しかも組織的な隠ぺい工作も疑われており、この点が大きく批判の対象となっています。

 

 関連分野では、つい先日も中央省庁の障害者雇用水増し問題もありましたし、こうした報道を前にして、私も「厚労省、しっかりしてくれ~」という思いは当然なのですが、一方で、根本的な部分で、こうした統計・データとの向き合い方というものについて改めて考えさせられました。

 

 私たちは、統計・データと言われるものを、どう捉えればよいのか?

 

 ここ数年、海外自動車メーカーのディーゼル不正問題や国内大手一流メーカーの各種品質不正問題など、それまで絶大な信頼があり、強大なブランドを築いていたものが一瞬にして信用を失うようなニュースが続きました。政府の統計ではありませんが、社内的に検査データを積み上げて適否を判断し、外部に提示して信用を得るというプロセスに目を向ければ、同様の文脈で語られるべきでしょう。

 

 当然ながら、当事者の側としては、職業人としての矜持、それこそ匠の職人に倣うべくプロ意識が問われて然るべきですが、一方で、一段高い視点から見れば、受け手となる私たちとしては、何かの判断にあたっては、外部情報として入ってくる実績やデータ、そして権威性といったものに対して、過度な信頼は慎むべきで、それらと一定の距離を置くというのが正しいスタンス、本来の在り方ではないかと考えられます。

 

 分析哲学者ウィラード・クワインが提唱したデュエム・クワイン・テーゼ(=「全面的改訂可能論」)という概念。人間社会においては、全体論が前提とされ、個別の観察・データを積み上げていったとしても(仮に反証されるデータが確認できたとしても)、全体の一部を修正するなどして、結局はある信念の下に結論を導き出してしまうことを表していますが、「科学的検証」と称されるものを妄信することに警鐘を鳴らしているとも言えます。

 

 これからの時代、AIが席捲する、空前のデータ社会になることは確実です。そのプロセスがブラックボックス化することを懸念する報道も一部出ていますが、どれほどデータの精度を高めたとしても、法制化を厳格にしたとしても、出てきた結果がどこまでも不確かであることは、その特性上、否定できません。

 

 ますます便利な時代になるとともに、AIをいかに使いこなすかがこれからの生き残りの分かれ道と言われますが、まさに「酒は呑んでも、呑まれるな」、「データは使っても、使われるな」。不確実性とは常に隣り合わせであることを自覚し、常に俯瞰した視点でものごとを判断することを忘れないでいたいところです。

 

(2019-1-19)

 

 

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