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#2:「心理学偏重の危うさ」

これが「潜在意識」?
これが「潜在意識」?

 人の行動に関して話が及ぶとき、必ずと言っていいほど出てくるキーワードが「心理学」です。

 

 曰く、「これは心理学的に●●●だ」とか、「心理学でもそのように言われているから間違いない」とか。確かに、実際に目の前にいる人の心理の状態が正しく把握できるのであれば、コミュニケーションも円滑に進みますし、次にどのような行動をするのかも予測がつけば、ビジネスはもちろん、恋愛、その他日常生活でもすべてが有利に進められそうな気がしてきますが、果たしてそのようなことは可能なのでしょうか。

 

 前回のコラムでも少し触れましたが、心理学は元々は哲学から生まれたものです。

「人間とは?」のような問いから、人間の意識や認識、心といったものに興味・関心が及ぶのも至極自然な流れだったといえるでしょう。起源としては、実験心理学の父としてヴイルヘルム・ヴントが挙げられますが、一般的には、初めて精神医学に目を向けたと言われるフロイトが有名かもしれませんね。あとは、ユングやここ数年ビジネス書で話題となっているアドラー、組織・人事理論などではお馴染みのマズローなどがポピュラーでしょう。

 

 一般に「心理学」は大きく分けて2つに分類されます。科学的経験主義の立場から観察・実験・調査等の方法によって一般法則の探求を推し進める「基礎心理学」、そして基礎心理学の知見を活かして現実生活上の問題解決に役立てる「応用心理学」。「基礎心理学」には、発達心理学や社会心理学、学習心理学など、「応用心理学」には、臨床心理学やスポーツ心理学、災害心理学、犯罪心理学などがあります。

 

 さて、ここで注意しなくてはいけないのは、「心理学」という言葉が私たちに与えるイメージです。要は、かなりのバイアスがかかってしまっているということ。

皆様はいかがでしょうか。

目に見えず、どうにも掴みどころのない私たちの「心」に対して、あたかも「心理学」を持ち出せばすべて解決できるようなイメージを持っていませんか?

だとすれば、非常に危険な状態、一度リセットする必要があります。

 

 先ほど申し上げたように、心理学とは、どのような分野のものも観察や実験等を積み上げて、結論を導き出す科学的手法により体系化されたものですが、草創期の心理学は、この実験等もどれだけ十分に行われていたか疑わしく、言ってしまえば、提唱者の思い込み、「疑似科学」とされているものが多いのです。しかも、どちらかというと、我々の社会に浸透しているのはこの「疑似科学」、いや、正確にいえば、この「疑似科学」から都合の良い部分だけ抜き取り、デフォルメしたような「似非(エセ)科学」がほとんどといってもよい状態です。

 

 例えば、よくあるやつですと、フロイトの無意識という概念を潜在意識という言葉に置き換え、海の上に氷山が浮かんでいて、沈んでいる大部分が潜在意識だと、そこに働きかけることであなたの真の力が発揮されるみたいな。現代では、そもそも無意識などという存在自体が否定されていますし、そこに声がけなどしても石に向かって話をしていようなものです。

 

 では、正当な科学分野と呼べる、現代心理学の類であれば、全面的に信奉するべきかというとそれも違います。結局、いくら精緻な実験を積み重ねた上の結果だとしても、その次も確実にそうなることは原理的に断言できませんから。(このあたりの論理、「科学」を妄信する落とし穴についてはまたの機会で取り上げたいと思います。)

 

 結局「心理学」という言葉に絶対信仰のイメージを抱いてしまう、何かの法則を知っていたら、もう最初から結論を決めつけてしまう、こうしたバイアスが働くということですね。

 

いわゆる「ミュラー・リヤー錯視」ですが・・・
いわゆる「ミュラー・リヤー錯視」ですが・・・

 例を挙げますと、まずは添付の画像をご覧ください。いわゆる「ミュラー・リヤー錯視」と言われるものですが、名称は知らなくても、一度はご覧になられた方も多いのではないでしょうか。

 

 これを見たとき、大抵の方は、

 

「あっ、これ知ってるよ。目の錯覚のやつでしょ?下のほうが長いように見えて、実は長さは同じなんだよね?」

 

おそらくこのように言われるのではないでしょうか。

ただ、残念ですが、この図は私が独自に作成したもので、下の線のほうを1ミリほど長くしており、同じ長さではありません。

 

 どうでしょう。これはほんの一例ですが、実際の日常生活の中でもこうした判断ってありがちじゃないでしょうか?

 

 心理学をベースにした理論や法則などは、それこそ非常にたくさんあり、どれも非常に納得感がありますし、しかも、事例なども我々の生活にリンクしているため臨場感が湧きやすく、正直、かなり面白いです。ただ、この納得感、面白さ、そして臨場感が曲者。ある意味、知れば知るほど、私たちの目を曇らせるとも言え、利得をもたらすどころか、害にしかならないと言えるでしょう。特に、知識欲が高く、勉強家で、書店に平積みされているビジネス書を何十冊も多読しているような方は要注意です。

 

 もちろん、私は心理学という学問そのものを侮蔑しているわけではありません。

 言ってみれば、これは科学の中の一分野であるが故の宿命ともいえ、一流の研究者のような方であれば、当たり前のこと(分野は違いますが、先日ノーベル賞を受賞した本庶先生が「教科書を信じるな」と熱弁していたように。)、むしろ我々のような一般大衆が陥りやすい盲点とも言えるでしょう。

 

 人事分野においては、その特性上、かなり心理学ベースの理論、教材、その他コンテンツが溢れています。コーチングやカウンセリング、社員研修、評価制度、適性診断など・・・。もちろん、こうしたコンテンツを一切活用するなとは言いませんし、私自身もある局面における有用性という点で、実際に活用を勧めることもございます。しかし、大切なのはそこに絶対的な真理などはないということ。常に疑いの目を向けながら、最終的な判断の主体は自分たちであるという考えの下で、取り組まれることをお勧めします。

 

(2018-11-7)

 

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