社宅費用は報酬に含めなくてもいい?
社員の入社や異動時期も近くなると、受け入れ体制の整備や社宅制度等の検討で頭を悩ます担当者も多いかもしれませんね。
そこで今回は、よく間違えやすい社宅や寮などの費用に関する社会保険上の取扱いについて取り上げてみようと思います。
Q:「会社が従業員に社宅や寮などを提供している場合に、その費用は社会保険上の報酬に含めなくていいか?」
A:「都道府県ごとに厚生労働大臣が定める価額で通貨に換算して報酬に算入しなくてはいけない。」
給与は、金銭で支給されるのが一般的ですが、住宅(社宅や寮など)の貸与、食事、自社製品、通勤定期券などで支給するものを現物給与といいます。
報酬や賞与の全部または一部が、通貨以外のもので支払われる場合(現物給与)の価額は、厚生労働大臣が告示で定め、この価額に基づき通貨に換算し、金銭と合算して標準報酬月額が決められます。
では、”厚生労働大臣が定める価額”とは、具体的には?
これは、別表で都道府県別に明示されており、例えば東京都では、令和2年度現在、1畳あたり2,590円となっています。算出には、居住用のスペースのみを対象とし、玄関・台所・トイレ・浴室・廊下など居住用以外のスペースは含めません。また、従業員(被保険者)から一部費用を徴収する場合は、先の価額から本人負担分を差し引いた額を算入します。
具体的に算出してみましょう。
(例)会社の借上げ社宅(東京都、居住スペース:15畳) 本人負担:10,000円のケース
2,590円×15畳=38,850円
38,850円-10,000円=28,850円
この場合、28,850円を実際に支給される給与にプラスして、標準報酬を決めることになります。
※借上げ社宅の場合で、実際に会社が負担している賃料がいくらかについては、ここでは全く関係ありませんので、ご注意ください。
※上記は令和2年4月1日時点の価額に基づき算出しております。
以上、社会保険上の取扱いになりますが、通勤交通費などと同様、税務上の取扱いと違う点に注意が必要です。上記は、従業員の例で説明していますが、社会保険の被保険者ということでいえば、経営者・役員も当然ながら同様の取扱いになります。
社宅費用分を本人給与から控除することで、その分社会保険料の軽減になると認識されている方もいらっしゃるようですが、全く報酬に含めなくてよいわけではありませんので、この点ご注意ください。自己負担が発生していれば、給与台帳等をチェックすることにより、実態が分かってしまいますので、くれぐれも漏れがないように配慮したいところです。
令和2年4月から現物給与の価額、現物給与に関するQ&A(日本年金機構)
令和3年4月から現物給与の価額、現物給与に関するQ&A(日本年金機構)
国税庁 税務上の取扱い「源泉所得税-使用人に社宅や寮などを貸したとき」
上記その他社宅費用、社会保険等ついてご相談をご希望の方は、以下よりご連絡ください。
※ご相談については有料となります。
※法人・団体のお客様(代表者、担当者様等)、個人のお客様(企業の従業員等)ともお受けしております。
(情報更新日:2021-3-9)
※公開日・更新日時点での法令・情報等に基づいた内容となっております。