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2014/6/12号 メルマガ記事③

今春創設された女性活躍を

推進するための助成金
 

文書作成日:2014/6/11

 

  近年、企業における女性の活躍への関心が高まっていますが、現実の女性管理職比率(課長相当職以上に占める女性の割合)は9.4%(平成23年度雇用均等基本調査)に止まっており、まだまだ高いとは到底言えません。そのため国は女性の管理職候補者の育成を課題として掲げ、新たに助成金制度を創設し、女性活躍の推進を図っています。そこで今回は、今春創設された助成金の中から、「ポジティブ・アクション能力アップ助成金」と「育休中・復職後等能力アップコース」についてとり上げましょう。

 

 今回創設された「ポジティブ・アクション能力アップ助成金」は、仕事と家庭の両立支援に取り組む事業主等に対する両立支援助成金制度のメニューの一つとして加えられました。女性管理職の育成を目的とした研修制度の実施等に対して助成が行われます。

【助成のための具体的な実施内容】
 この助成金は、事業主が以下のすべてについて実施した場合に支給の対象となります。

① 女性の職域拡大または管理職登用等に関し、ポジティブ・アクションに関する数値目標(※1)を定めていること
※1 数値目標とは、②のサイト等に数値目標を掲載した日から助成金の支給申請時点までの間に、増加させようとする以下のa.またはb.の女性労働者に関する目標を言います。

a.女性の職域拡大に関する目標
・女性労働者が男性労働者と比較して相当程度少ない職務において増加させる女性労働者の数
b.女性の管理職登用等に関する目標
・女性労働者が男性労働者と比較して相当程度少ない役職において増加させる女性労働者の数
・社内の規定等に基づいて女性労働者が男性労働者と比較して相当程度少ない役職への昇進を行うにあたり必要となる社内試験の合格者について増加させる女性労働者の数

② ポジティブ・アクション情報ポータルサイト内のポジティブ・アクション応援サイトまたは女性の活躍推進宣言コーナー(※2)に①の数値目標を掲載していること
※2 ポジティブ・アクション応援サイト
  http://www.positiveaction.jp/pa/index.php
  女性の活躍推進宣言コーナー
  https://www.positiveaction.jp/declaration/

③ ②の数値目標掲載後、平成26年4月1日以降に女性の職域拡大または管理職登用等に必要とされる能力を付与するため等の研修(ポジティブ・アクション研修)を30時間以上実施すること

④ ②の数値目標掲載日から6ヶ月経過後3年以内に達成し、さらに支給申請日までその状態が継続していること

⑤ ④の数値目標を達成するにあたり、女性労働者のうち少なくとも1名は③のポジティブ・アクション研修に参加していたこと

 なお、上記③については、女性の職域拡大または管理職登用等に必要とされる能力を付与するため等を目的に研修を実施することをあらかじめ計画し、明文化していることが必要とされています。また、その計画には[1]目的(女性の活躍推進であることが明らかになっていること)、[2]実施する研修の種類、[3]対象者(役職、職種、雇用管理区分等)の3点を記載しておくことが最低限必要です。

【助成額】
 この助成金の受給は、1事業主1回限りとなっており、その支給額は中小企業で30万円、大企業で15万円となっています。

 

【助成を受けるための手続き】
 事業主は、目標を達成した時期に応じて、以下の期間内にポジティブ・アクション能力アップ助成金申請書等を管轄の労働局雇用均等室に申請する必要があります。
・1月1日~6月末までに目標を達成した場合:7月1日~8月末日までに申請
・7月1日~12月末日までに目標を達成した場合:翌年1月1日~2月末日までに申請

 

 今回、キャリア形成促進助成金のメニューの一つとして「育休中・復職後等能力アップコース」が創設されました。これに合わせ、これまでは同様の目的の助成金が中小企業両立支援助成金の休業中能力アップコースとして設けられていましたが廃止となっています。この「育休中・復職後等能力アップコース」については、育児休業中・復職後・再就職後の能力アップのための訓練が助成対象訓練として追加されており、妊娠・出産・育児により離職した者を新たに雇用した場合に実施した訓練についても、助成対象となります。

 

【助成のための具体的な実施内容】
 以下の要件を満たす訓練を実施する場合に助成が受けられます。なお、訓練対象者は雇用保険の被保険者になります。
・Off-JTにより実施される訓練であること
(事業主自ら企画・実施する訓練、または教育訓練機関が実施する訓練)
・助成対象訓練時間が20時間以上であること
・次のいずれかに当てはまる訓練であること

① 育児休業中の訓練
 3ヶ月以上の育児休業取得期間中の雇用保険被保険者を対象とする自発的な訓練(通信・自宅学習も対象)

② 復帰後の能力アップのための訓練
 3ヶ月以上の育児休業取得期間終了後に職場復帰して、1年以内の労働者を対象とする訓練

③ 妊娠・出産・ 育児により離職した労働者の再就職後の能力アップのための訓練
 妊娠・出産・ 育児により離職したが、子どもが小学校入学までに再就職した労働者に対して、再就職後3年以内に行う訓練

【助成額】
賃金助成:1人1時間あたり800円(400円)
経費助成:2分の1(3分の1)
※(  )内は大企業
 支給限度額が設けられています。

〈支給対象となる経費〉
●事業所内訓練
・社外の講師への謝金・手当

所得税控除前の金額。旅費・車代・食費・宿泊費などは対象外
1時間あたり3万円が上限

・施設・設備の借上費

教室などの会場使用料、マイクなど訓練で使用する備品の借料で、助成対象コースに使用したことが確認できるもの

・学科や実技の訓練に必要な教科書などの購入・作成費助成対象コースのみで使用するもの

 

●事業場外訓練
・受講に際して必要となる入学料・受講料・教科書代など
※あらかじめ受講案内などで定めているもの。国や都道府県から補助金を受けている施設が行う訓練の受講料や受講生の旅費などは対象外

〈支給対象賃金〉
訓練期間中の賃金について、賃金助成の対象なります。
※所定労働時間外・休日(振替休日を取得した場合を含む)に実施した訓練は、賃金助成の助成対象外となります。
※育休中・復帰後等能力アップコースのうち育児休業中の訓練は経費助成のみで、賃金助成はありません。

[助成を受けるための手続き]
 対象者に訓練を実施する前に「事業内職業能力開発計画」「年間職業能力開発計画」を策定し、「職業能力開発推進者」を選任しておく必要があります。そして訓練実施の原則1ヶ月前までに、「訓練実施計画届」と「年間職業力開発計画」や訓練カリキュラムなど必要な書類を都道府県労働局に提出することになっています。次に、支給申請については、訓練終了日の翌日から2ヶ月以内に、「支給申請書」と必要書類を都道府県労働局に提出します。なお、申請手続は雇用保険適用事業所単位となります。

 今後の労働力が減少する時代を考えると、女性の活躍は多くの企業にとって重要な課題となってくるでしょう。このような助成金を活用しながら、女性が活躍できる環境の整備を整えていくことで、女性労働者の労働意欲の向上や能力の発揮に繋がることが期待されます。

 

■参考リンク
厚生労働省「ポジティブ・アクション能力アップ助成金」
http://www.mhlw.go.jp/general/seido/josei/kyufukin/dl/koyouantei_22-7.pdf
厚生労働省 キャリア形成促進助成金「育休中・復職後等能力アップコース」
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/dl/d01-1-2.pdf

 

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。