企業に求められるハラスメント対策
文書作成日:2014/12/8
先日、妊娠・出産等を理由にした降格が「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」(以下、「均等法」という)に違反するかどうかが争われた訴訟の判決が最高裁で言い渡されましたが、その際、「マタハラ裁判」という言葉を耳にされた方もいらっしゃるのではないでしょうか。最近は、セクシュアルハラスメント(以下、「セクハラ」という)、パワーハラスメント(以下、「パワハラ」という)だけでなくマタニティハラスメント(以下、「マタハラ」という)という問題も出てきており、これらのハラスメント対策は企業にとってますます重要性を増しています。そこで今回は、これらのハラスメントに関する定義と企業に求められる具体的な対策について解説しましょう。
1)ハラスメントの定義
現状、ハラスメント行為に対する問題意識は持っていても、その定義を正確に理解している人は多くありません。そこでそれぞれの定義について確認しておきましょう。
①セクハラ
均等法の第11条では、「職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されること」のないよう事業主に対し雇用管理上必要な措置を講ずるよう義務付けています。これらのことをセクハラと定義しています。
②パワハラ
パワハラについては法律上の明確な定義はありませんが、厚生労働省では、職場のパワハラを「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう」と定義づけています。
③マタハラ
マタハラについても法律上の明確な定義はありません。ひとつ参考になるものとして、日本労働組合総連合会(連合)では、マタハラを「働く女性が妊娠・出産を理由とした解雇・雇止めをされることや、妊娠・出産にあたって職場で受ける精神的・肉体的なハラスメント」として取扱っています。
2)企業に求められる具体的なハラスメント対策
セクハラ対策については、厚生労働省が定める指針の中で事業主が講ずべき措置として10の項目が定められています。これらはパワハラ、マタハラ対策にも広く展開することができ、以下の予防対策、事後対策、予防・事後対策と併せて行うべき対策の3つにまとめられます。
[予防対策]
①職場におけるハラスメントの内容・ハラスメントがあってはならない旨の方針を明確化し、管理職を含む従業員に周知・啓発すること
②ハラスメントの行為者については、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し、管理職を含む従業員に周知・啓発すること
③相談窓口をあらかじめ定めること
④相談窓口担当者が、内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。また、広く相談に対応すること
[事後対策]
⑤事実関係を迅速かつ正確に確認すること
⑥事実確認ができた場合には、速やかに被害者に対する配慮の措置を適正に行うこと
⑦事実確認ができた場合には、行為者に対する措置を適正に行うこと
⑧再発防止に向けた措置を講ずること(事実が確認できなかった場合も同様)
[予防・事後対策と併せて行うべき対策]
⑨相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、周知すること
⑩相談したこと、事実関係の確認に協力したこと等を理由として不利益な取扱いを行ってはならない旨を定め、従業員に周知・啓発すること
企業としては「自社でハラスメント問題が起きるはずはない」と対策を打たずに済ませるのではなく、ハラスメント問題が生じないように従業員に対して研修を実施して啓発するなどまずは予防対策を行っておくことが強く求められます。
文書作成日時点での法令・情報等に基づく内容となっております。